当該案件は、当初の想定からはかけ離れた解決をしました。理由は様々ありますが、戦前戦後の戸籍制度の違いや、風習等により思ってもいない展開をした事件です。それだけに思い入れもあり、ご紹介いたします。
依頼者 | 90歳をゆうに超えた品のあるおばあちゃま |
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依頼内容 | 孫のように育てた姪の子供が亡くなり、相続人がいないので、遺産の整理をしてほしい。 |
結果 | 相続人が見つかり、相続人との話し合いの上、遺産については各自が等分で承継した。 |
客観的事実 | 本人からの聞き取り及び調査等で判明した事実としては、①依頼者が戦前に後妻として婚姻をしたこと。②戦前は家督制度があり、同じ戸籍に嫁、甥、姪、孫等が一つの戸籍に記載される制度であったこと。③前妻との間には子供がいたが、②の事情もあり法律上も自分の子供と勘違いしており、養子縁組等することなく、今に至っていること。④戸籍を収集してみると、第三順位の代襲相続人として相続人がいること。これらのことが判明した。 |
問題点及び解決策の提示 | 問題点として、相続人がいることが判明したため、相続財産管理人選任はできないことを説明し、今後の対応策として、①相続人に相続放棄をしてもらい相続財産管理人選任申立を行う。②相続人の存在を認め、話し合いにて円満解決する。の2案を、メリット・デメリット及び予想される今後の動きとともにご説明しました。当職としては②の選択をお勧めし、依頼者にも②を選択して頂きました。 |
具体的解決 | 方針が決定したことにより、依頼者とともに、相続人のもとへお伺いし現状の説明及びこちらの希望等をご説明。もちろん、相続人としての権利行使も可能である旨説明。相続財産は全て相続人が承継し、相続人から依頼者に贈与してもらう形で解決しました。贈与を受けた方は贈与税を納付しなければなりませんが、贈与税納付後、各人が均等となるように資産を分けることができ、円満解決をすることができました。 |
総括 | 今回は、戦前の家督制度により依頼者が勘違いしても仕方のない状況ではありました。また、代襲相続人の方も依頼者親族と疎遠にしていた、というよりもほぼ接点がない状況でした(いろいろ事情はありますが、割愛させていただきます)ので、正直話がまとまるのかとの不安はありましたが、依頼者の方はもちろん、代襲相続人の方も喜んで頂けて、私としては凄く思い入れのある事件になりました。何より、今後このような事件に巡り合うことはないのではないかと思わせた事件です。相続関係もかなり複雑でしたし、何より人間模様が複雑すぎました。 |